作品資料
シボレス / Shibboleth
ドリス・サルセド / Doris Salcedo
2007 · インスタレーション / ミクストメディア
概要
Overview
美術館の巨大な床面を長く走る亀裂として実現され、鑑賞者が避け、また覗き込みながら歩くことを求められた場所固有の作品である。
建築の損傷に見える形を制度空間の中心へ置き、境界、排除、植民地主義の歴史を、説明図ではなく身体の動線の分断として経験させる。
造形分析
Formal Analysis
構図
Composition
細い始点から分岐しながら幅を変える長い亀裂が広大な床を非対称に横切り、視線と歩行を奥へ導く一本の方向線になる。
空間
Space
平らで連続するはずの床に深さと越えにくい境界を生み、展示空間を眺める背景から、身体が判断を迫られる主題へ変える。
色彩
Color
灰色の床と暗い亀裂の強い明度差が、装飾的な色を使わずに輪郭と深さを遠方からでも認識させる。
形態
Form
不規則な分岐と幅の変化は自然発生的な割れ目を思わせる一方、建築軸を横切る長い連続によって明確な構成意志を示す。
マチエール
Material
建築と同じ床の硬さ、内部の粗い面、埋め戻された後に残る傷跡までが、作品を一時的な像ではなく場所の物質的な履歴にする。
文脈・解釈
Context & Interpretation
文脈
Context
ロンドンの旧発電所を転用した巨大展示空間で制作され、近代美術館という制度と、ヨーロッパの富を支えた植民地主義の歴史を結び付けた。
題名は発音によって所属を判別し排除した聖書上の逸話に由来し、言語的な境界を建築上の亀裂へ置き換えている。
解釈上の論点
Interpretive Issues
亀裂を見世物として楽しむ行為と、排除される側の危険を身体的に想像する行為が近接し、鑑賞者の立場そのものが問われる。
展示終了後に亀裂が埋められ痕跡が残ったことは、制度が傷を修復する行為と、歴史を消し切れない状態の双方として読める。
受験上の着眼点
Exam Points
亀裂の幅、分岐、方向が歩く速度や経路をどこで変えるかを、自分の身体を基準に具体的に記述する。
遠くから線として見る場合と、近づいて内部の粗さを見る場合で、作品のスケールと意味がどう変わるか比較する。
題名の由来を踏まえつつ、境界と排除が床面の連続、暗部、越える動作によってどう造形化されるか説明する。
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