作品資料

無限の鏡の間―ファルスの原野 / Infinity Mirror Room—Phalli's Field

草間彌生 / Yayoi Kusama
1965 · インスタレーション / ミクストメディア

概要

Overview
鏡で囲まれた室内の床に、水玉模様を施した多数の柔らかな突起を配置し、実物と鏡像が見分けにくい環境をつくる作品である。
限られた数の手作りの形が反射によって見かけ上無限に増え、鑑賞者自身の身体も反復する像の一部へ組み込まれる。

造形分析

Formal Analysis

構図

Composition
床面の突起には中央の主役がなく、鏡面を越えて同じ密度が続くように見えるため、構図の境界が実空間の外へ拡張される。

空間

Space
鏡の反射が壁の位置と奥行きの終点を曖昧にし、身体は小さな室内に立ちながら方向を失うほど広い像の空間を経験する。

色彩

Color
白い布と赤い水玉の明快な反復が個々の形を読み取りやすくしつつ、鏡像の重なりによって視野全体を均質な場へ変える。

形態

Form
高さと傾きの異なる柔らかな突起が群れをつくり、直交する鏡の硬い面と対照をなしながら、反射内では両者の境界が増殖する。

マチエール

Material
縫製された布の触覚、平滑な鏡、反射する光という異なる物質が協働し、実物の数を超えた像を物理現象として生成する。

文脈・解釈

Context & Interpretation

文脈

Context
手作業で大量の突起を作る負担に対し、鏡を用いて有限な物体を見かけ上増殖させる方法を導入した初期の鏡室作品である。
絵画やオブジェにあった反復を、鑑賞者が内部へ入る環境へ展開し、見る主体と見られる作品の境界を組み替えた。

解釈上の論点

Interpretive Issues
無限という印象は比喩だけでなく鏡の配置による具体的な光学現象であり、実物と像の違いを区別して分析する必要がある。
没入的な楽しさだけでなく、自分の身体が細分化され制御できない像として反復される不安定さも作品経験に含まれる。

受験上の着眼点

Exam Points
実物の突起と最初の鏡像、その先の反射を見分け、有限な配置が無限に見える仕組みを順序立てて説明する。
鏡の継ぎ目、角、入口など空間の境界が露出する箇所を探し、没入が完全でない瞬間にも注目する。
自分の身体像が突起のパターンへ入る位置を考え、鑑賞者が構図の外部に留まれない点を論じる。