作品資料

春 / Spring

サンドロ・ボッティチェリ / Sandro Botticelli
1480年頃 · テンペラ
作品画像
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ウフィツィ美術館:春 ↗

概要

Overview
暗い木立と花の咲く地面を舞台に、神話の人物たちが横長の画面を占める。中央のヴィーナスの周囲で複数の動作が進む。
右の接近する人物群、左の輪を作る三美神、さらに外側へ向く人物が、同じ場所に異なる時間を重ねている。

造形分析

Formal Analysis

構図

Composition
中央の人物の周囲に間を残しながら左右へ人物を並べ、視線が一つの出来事に止まらず横へ巡る構成を取る。

空間

Space
樹木が壁のように奥を閉じ、足元の細かな花と人物の重なりによって、浅い舞台状の空間が成立している。

色彩

Color
暗い葉の面を背景として白い衣や肌が浮き、花と果実の小さな色の点が全体に散らばる。

形態

Form
手をつなぐ腕や透ける衣の縁は円弧を描き、近接する身体を一つの塊にせず個別の輪郭として読み分けさせる。

マチエール

Material
板上の油分を含むテンペラによる細密な描写は、植物の小ささと人物の大きさを同じ表面に共存させる。

文脈・解釈

Context & Interpretation

文脈

Context
ルネサンス期の神話画では古代の人物や物語が、同時代の人々にとっての愛や繁栄を考える材料にもなった。
ウフィツィの現行記録は1480年頃とし、題材の理解に重要な植物と衣の描写も、現在までの経年変化を受けている。

解釈上の論点

Interpretive Issues
人物の名前が分かっても画面全体の意味が一意に決まるわけではなく、寓意を読むには組合せと動作の検討が要る。
《ヴィーナスの誕生》と同館にあることを理由に、最初から対作品として制作されたと決めつけない。

受験上の着眼点

Exam Points
右から左へ人物の向きと手の動きを追い、同時に描かれる出来事が一方向の物語に収まるかを検討する。
中央の空隙と左右の密集を比較し、人物の大きさを変えなくても中心を作れる仕組みを説明する。
細かい花の反復と大きな人体の輪郭を区別し、近づいて見る場合と離れて見る場合の違いを述べる。